現役証券マンの経済コラム
~お金の流れで世界を知る~
日本のゼロ金利政策とマイナス金利、言葉だけでも聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
本日は、金利についてのお勉強その②です。
ゼロ金利政策
前回「金利の変動は経済の温度調節」とご説明させていただきましたが、近年の日本ではこれが全く役に立たない状況にありました。
皆さんもご存知のゼロ金利政策時代です。
なぜ役に立たない状況にあったのかと言うと、金利で経済温度を調節したいのに、これ以上金利を下げられないところまで下げてしまっていたからです。
そして金利がゼロの状態でも日本では景気悪化が継続していましたので、黒田日銀総裁は「買いオペレーション」と言う手法を使って大量の貨幣供給を行ったのです。
(日銀の政策手法は今後ご説明します)
紙幣の流通量
皆さんはお手元にあるお札の流通量って気にした事ありますか?
実は日銀が貨幣供給を始めてから、市中に出回る貨幣と、銀行保有の貨幣流通量(専門用語でマネタリーベースと言います)は実施前が約70兆円だったのに対して、現在は470兆円を超える金額になっています。
この結果貨幣価値が減少してインフレが進んでいます。
インフレもコントロール範囲内ならいいのですが、行き過ぎると第一次世界大戦後のドイツのようなハイパーインフレになる可能性があるのです。
第一次世界大戦後にドイツは多額の賠償金を支払うために、紙幣を大量印刷した結果、貨幣価値が暴落しました。その為パンを買うのにトランクケースにお札を詰めて買いに行かなくてはいけない程の状況に陥りました。
マイナス金利
このように金利で経済をコントロール出来なくなると、劇薬を飲んで経済回復をしなくてはならなくなります。
更に、2016年に日銀はマイナス金利と言う日本史に類を見ない政策を実施したのです。
ここで言うマイナス金利と言うのは、一般の銀行が日銀に今後追加で預けるお金に付ける金利をマイナスにすると言うものです。
ここまで来ると、日本の経済が現在どんな状況にあるか感じ取っていただけると思います。
現在の日本景気は過去に例を見ない程の緩和状態にあります。
これで日本が景気回復を定着できなかなった場合に訪れるのは、景気悪化とインフレが同時に起こるスタグフレーションと言う最悪な状態です。
インフレを抑えるために金利を上げなくてはいけないのに、景気は悪化して行く状況はまさに地獄です。
最近ではブラジルがこの状態に陥り、インフレ率は年率10%を超え、これを抑える為に金利は14.25%まで上昇しました。
結果として景気は悪化し、2016年はマイナス3.6%成長と言う景気後退を引き起こしたのです。
現在はアメリカなどが金利引き上げに動いていますが、日本もこの緩和状況を脱却しなくては、劇薬の副作用で崩壊するかもしれませんよ。
「日本なら大丈夫、預金なら大丈夫」と口癖の様に言っている方は、なんの根拠か分かりませんが、大金持ちが株式投資をする理由や不動産投資をする理由と同じように、外貨を持つ理由も考えてみてください。