東京証券取引所の上場基準見直しによる影響

現役証券マンの経済コラム
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こんにちは、雅の株ブログで経済コラムを担当している霧島です。

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前回は東京証券取引所の区分と上場基準の見直しに関して取り上げました。

関連記事:上場基準の見直しについて

今回はその続きで「上場基準見直しによって発生する影響」について考えていきたいと思います。




上場基準見直しがもたらす影響

前回お話しした、東京証券取引所の250憶円の上場基準は、実はリーマンショック後に低迷する新規上場の底入れとして、当時500憶円だった基準を見直して250億円に変更した経緯があります。

結果として東証一部の企業は増えたわけですが、今回の見直しで再度基準を500憶円に引き上げた場合、東証二部などに「格下げ」される企業が少なからず出てくる可能性が高くなります。

 

格下げになると単純に株式は売られやすくなるのですが、企業の収益性や成長性などが変わらなければ制度で格下げになっても問題ないと読んでいる方もいらっしゃると思います。

しかし、影響は個人投資家からではなく機関投資家から発生してくるのです。

 

投資信託のパッシブ運用

ではなぜ、企業を調べて成長への情報を持っている機関投資家から売りがでるのかというと、投資信託などのパッシブ運用の性質があります。

例えば、日本には日経平均に連動するように作られた投資信託が多くあり、その時価総額を足していくと上場投資信託(ETF)以外でも数兆円から十数兆円規模になると思われます。

これらの投資信託は日経平均に連動するように運用するため、日経平均に採用されている銘柄を買付して構成されているのですが、もしこの中で想定される新規上場基準の500億円に満たない企業があり、東証二部などに格下げされた場合は、投資信託の保有銘柄から外す(売却する)必要が出てくるのです。

POINT

売りたくなくても、投資信託の運用基準に合わなくなれば売却しなくてはならなくなる、ということ。

このような形は投資信託だけでなく、運用会社に一任勘定で任されている資産でも、運用規定に「売買銘柄は東証一部上場銘柄のみとする」のような運用基準があれば、同様に運用会社は売却の選択をしなくてはならないのです。

つまり「どんなに将来有望な銘柄であっても、運用規定には勝てない」というわけです。

そして売却されて発生したキャッシュが向かう先は「東証一部に生き残った銘柄」となるわけなので、500憶円の時価総額以下は売却され、以上に留まれた企業は買付されていくと想定されます。

今後発生するかもしれない制度変更は現在のマーケットには大きく関係なくても、知っているだけで投資行動が変わってくると思いますので、このニュースに関しては頭の片隅に置いておいて下さい。

*注意・まだ基準が500憶円になるのか1,000憶円になるのか、はたまた250憶円のままなのかも未定です。

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ABOUTこの記事をかいた人

こんにちは、投資診断士の遠藤雅士です。普段はWEBデザイン事務所を営んでいます。投資歴9年、投資メディア運営4年です。資格『投資診断士』取得。個別銘柄のファンダメンタル分析から割安株を探すことに趣きを置いています。チャート読みも割と得意です。趣味は楽器、スポーツ、家族と旅行です。