衆議院選まで日が迫るなか、今回自民党総裁となった岸田総裁の政策の中でも度々登場した「1億円の壁」という言葉について今回は確認していきたいと思います。
岸田総裁が自民党総裁選で掲げた分配政策において金融所得課税の見直しが上げられました。その中ででてきた「1億円の壁」という言葉ですが、当時は言葉だけが先行したためよくわからないままになってしまっている方も多いと思うので、少しかみ砕いて説明していきたいと思います。
1億円の壁
まず説明の前に岸田さんが属する政党派閥の宏池会について説明すると「ガチガチの金融系」ということを覚えておいてください。この派閥の事務局長をはじめとして所属議員には銀行関係と繋がりの深い人物が多くいます。(ちなみに岸田総裁は日本長期信用銀行(現、新生銀行)の銀行員です。)
そのため、岸田総裁は金融界が望む「現実路線で段階的な変革」に寄り添うと思われていましたが、掲げられた金融所得税の見直し(20%→25%程度への増税)は貯蓄から投資への現状の流れに逆行する形としてネガティブインパクトをもたらしました。
これにより日経平均は8営業日連続下落という12年ぶりの記録を打ち立ててしまうのです。
さて、話を戻して1億円の壁というものについてご説明すると「所得税負担率が所得1億円付近でピークになり、それ以上の富裕層は負担率が下がる現象」を指しています。「累進課税性の日本でなにを言っているのか」と思った方もいらっしゃると思いますが、これには上記で出てきた金融所得税が関係しています。
例えば「日本で懸命に働いて5,000万円の所得があった人と、株式売買や配当金で5,000万円の所得があった超富裕層では収める税額に雲泥の差がでる」ことにお気づきでしょうか?
一例ですが、鳩山元総理の母親がブリジストンの創業家長女として有名で、当時の配当収入が3億円と言われています。これが働いて稼いだお金であれ1億6,500万円は累進課税で持っていかれますが、配当収入だと6,000万円に納税で済みます。
このように超富裕層には累進課税はあまり効果がなく固定された金融所得税の方が同じ所得でもお得となっているのです。
この形を所得税負担率として表すと所得1億円近辺から負担率が下がってくるという結果につながっているため、これを1億円の壁と呼称するのです。
まあ1億円の所得がある人でしたら富裕層だと思いますが、超富裕層はこのようなやり方で税金納付額を減らしていると言えます。
ただし、これを見直すことは様々な弊害(M&Aなども含めた株式投資の減少や、起業家の海外流出)があるため、一度議論を見送っている岸田総裁がどのように判断するのかは今後も株式市場に大きな影響をもたらすと思われるので注意が必要ですね。