現役証券マンの経済コラム
~お金の流れで世界を知る~
こんにちは、雅の株ブログで経済コラムを担当している霧島です。
今回は近年マーケットで異常な存在感を放っている、コンピュータを利用した超高速取引『HFT(高頻度取引)』についてご説明してみます。
HFT(高頻度取引)とは

1秒に満たないミリ秒単位のような極めて短い時間の間に、コンピューターでの自動的な株のやり取り戦略を実施するシステムのことです。 HFT、超高頻度取引、超高速取引、アルゴリズム取引、アルゴとも呼ばれる。
近年、大手証券会社(特に外資系証券会社)では、自己勘定取引部門(自社の資金を運用して利益を上げる部門)にて、人間が売買するのと並行し、コンピュータでの高速演算を利用し1秒で数百から数万回と言う取引を可能にしたHFTというものが主流になって来ています。
この高速取引は日本市場でも活用されており、取引の4割がこの取引ではないかとすら言われているほどです。
HFTの問題点
このHFTという高速取引は、実は非常にグレーな部分も存在しており、問題になっています。
マイケル・ルイスと言う方が書いた「フラッシュボーイズ~10億分の1秒の男達~」と言う本でもドラマのように紹介されています。
これは、「買付注文をすると自分が出した注文の値段にあった売り注文が誰かに買われている」と言う事象から、主人公が謎に迫っていくものです。
ご興味ある方は是非。
フラッシュ・ボーイズ 10億分の1秒の男たち
問題点:フロントランニング
何が問題なのかというと、高度に高速化された取引が売買情報を得た時点で、ミリ秒やナノ秒の単位で先回りして取引していると言うフロントランニング(先回り取引)が行われていると言ったことです。
フロントランニングは、顧客の注文情報を利用した自己売買のことをいいます。これは、証券会社等の金融商品取引業者やその役職員が、顧客から有価証券の売買の委託等を受けた場合、その売買を成立させる前に、自己の計算において、同一銘柄の売買を成立させることを目的として、同一価格を含む顧客の注文より有利な価格で有価証券の売買を行うことを指します。
日本では大阪証券取引所が東京証券取引所に吸収されたため、国内の取引の9割以上が東証で行われるためタイムラグはほぼ発生しないのですが、少しでもアクセスにタイムラグがあると先回りされる可能性があり、逆に取引所へのアクセスまで高速になればそれだけで有利になると言った具合です。
実際にはどうか?と言われると、最近は同様のシステムを持つ機関投資家が増え、競合するためあまり効果がなくなっているみたいです。
日本では2010年から東証で「アローヘッド」と呼ばれる超高速システムが東証で導入され、1000分の1秒単位で取引が出来るようになり格段に取引速度が向上しました。
この高速取引時代の幕開けとともに、取引の手法も大きく変化してきているのです。
問題点:フラッシュクラッシュ
しかしながら、マーケットに対してはまだまだ非常に問題な点も多く「フラッシュクラッシュ」と言う、株価の瞬間下落も度々発生するようになりました。
これは数式システムで取引するコンピュータが下落した株式を急速に売却したりするため、他の機関投資家のコンピュータの損切りラインを一瞬で割り込ませ、結果その機関投資家のコンピュータも売却するので、更に下落幅が広がると言う「下洛の連鎖」が一瞬のうちに起こると言った現象です。
人間のように考えたりはせず、しかも高速で大量の売却を出すため値幅の変動がとてつもない大きさになるわけですね。
近い将来には、トレーダーと言う職業はAI(人工知能)に取って代わられると言われています。
もしかしたらその時には、この高速取引のように、あなたの買い注文は先回りして買われていたり、意図的にAIがフラッシュクラッシュを発生させて慌てる人間を尻目に安い株を買い漁るなんて言う相場操縦みたいな事が起こるかもしれません。
最後までお読み頂きありがとうございました。