現役証券マンの経済コラム
~お金の流れで世界を知る~
こんにちは、雅の株ブログで経済コラムを担当している霧島です。平素は私のコラムをお読みいただきありがとうございます。
先日のコラムに引き続き、本日もドラマ『ハゲタカ』からテーマをピックアップしてみたいと思います。
前回の『ハゲタカ』解説記事はこちら。
本日は第3話で出てきた『ホワイトナイト』について解説してみます。
『ホワイトナイト』とは
先週のドラマ「ハゲタカ」で出てきた「ホワイトナイト」と言う鷲津の出した戦略はみなさんご覧になりましたか?
この「ホワイトナイト」とは「白馬の騎士」の意味で、アーサー王伝説から来ていると言われており、窮地に追い込まれて買収されそうになっている企業を支援する者を表します。
今回の場合は、大手メーカーのあけぼのをファインと言う企業がアメリカ大手軍事メーカーであるプラザグループの資金力を使って敵対的買収をする直前に、ホライズンの鷲津がホワイトナイトとなってあけぼのの支援を名乗り出るお話しでした。
「ホワイトナイトなんてドラマの中の事で、実際にはあまりないんでしょ?」
と思っている方も多いと思います。
実はその通りで実例自体はそんなに多くありません。
理由としては、まず何よりもホワイトナイトになってくれる企業や機関投資家を見つける事自体が難しいのです。
今回のハゲタカのように、タイミングよく「我々ホライズンはあけぼののホワイトナイトになります!」なんて簡単に言ってくれる鷲津のような企業はそう簡単には現れません。
まず第1に、企業を救うだけのリターンを見込める案件であるかどうかや、株式を買えるだけの資金があるかなど様々なハードルがあるのでドラマのハゲタカのようにはいかないと言うところは覚えておいて下さい。
しかしながら、全く実例が無いわけではないです。みなさんも知っている企業が出てくるホワイトナイトの事例が2つあります。
ホワイトナイトの実例
ライブドア
まず有名なものは堀江貴文率いるライブドアのニッポン放送買収です。
知らない方も多いと思うので概要をザックリ説明させていただくと、
当時のニッポン放送は会社の成り立ちの関係でフジテレビの筆頭株主だったのですが、ご存知の通りニッポン放送よりもフジテレビの方が資産規模も大きいわけで、かなり歪んだ資本関係があり、そこに目を付けたライブドアは、資本規模の小さいニッポン放送を買収して、資本規模の大きいフジテレビを間接的に支配しようと考えたのです。
まず、ライブドアはニッポン放送の株式を時間外取引で一気700億円で約30%買い占めると言う宣戦同時攻撃を仕掛けました。その後もライブドアはニッポン放送の株式を買い増して行くのです。
しかし、この時にホワイトナイトとなったのがSBIホールディングス(当時はソフトバンクインベストメント)でした。
鷲津のような派手さは無いものの、ニッポン放送が持つフジテレビ株式を受け入れる事で、ライブドアがニッポン放送の経営権を握ってもフジテレビの経営権は握れない構図を作り上げたのです。
最後はフジテレビとライブドアの業務提携で話は終わり、この件で堀江貴文はインサイダー取引の容疑をかけられて刑務所送りになるのです。(正確には、『風説の流布、偽計取引罪』『有価証券報告書の虚偽記載罪』という罪なのですが、ここでは割愛します。)
オリジン東秀
もう一つはオリジン東秀(オリジン弁当)に対するドンキとイオンのTOB合戦です。
これは、まずオリジンと業務提携をしていたドンキが考えが合わない経営陣を一掃します。
そしてオリジンの経営権を握るために過半数の株式取得を目指して起こしたTOBに、オリジン経営陣がイオンへ助けを求め、今度はイオンがオリジンのホワイトナイトとしてTOBを発表すると言う、まさにドラマのような事件でした。
そして最後はイオンがオリジンの経営権を握りました。
まとめ
このように企業の買収は様々なかたちがありますが、その裏には少なからずの欲と金が動いています。
しかしなが私の元顧客で、一代で会社を年商数十億の企業にされた会社の会長が仰っていた「欲を無くした人間は死んだも同然」と言う言葉は今でも脳裏に焼き付いています。
「欲は悪では無く、エネルギー源である」という考え方です。
今回は「ホワイトナイト」と言う企業買収の対抗策についてでしたが、企業買収には様々な「対抗策」と「予防策」がありますので、今後は少し企業買収について書いていきたいと思います。